不思議そうな顔をしている私に向けて星羅ちゃんは薄く笑った。

「だって泣きそうだったから。最近ずっと頑張ってたでしょう?たまには泣いた方が紗夜にとってはいいんじゃないかと思ったのよ」

「.....星羅ちゃん」

そんなこと言われたら.....。

「やっと泣いた」

あなたは優しすぎるんだよ。

ただその優しさが不器用なだけ。

きっと惺くんだって同じ。

2人にどれだけ救われたことか.....。

私はいつになったら2人に恩返しできるんだろうね。


「はい、もう泣かない」

「.....うぅ」

「いい加減に泣き止みなさいっ」

「.....ぅ」

「けじめをつけないと前に進めないわよ」

「.....はい」

「よし泣き止んだわね。それで紗夜、今話してたんだけれどね。幕張音楽国際コンクールの話先生から聞いたかしら?」

「あ、聞いた聞いた。2人とも出るの?」

「もちろん出るわ」

「俺も」

「.....じゃあ私も出ようかな」

「そうこなくっちゃ。それでね実は.....」

星羅ちゃんの話によると

中国とアメリカの要注意人物が今回のコンクールに参戦するらしい。

そしてその2人はかなりの実力を持っていて、世界的にも知られている人たちだということ。

「俺ら4人の戦いどころじゃねえな」

「なに言ってるのよ、惺。あなたたち2人の戦いでしょう?私は惺もアレンもまだライバルだなんて認めてないわ」

虚をつかれ、間の抜けたような顔をしている惺くん。

もうそろそろ認めてあげてもいいのに。