「花本ー、リキが体育で泣いてた……」

「私呼びに来る前に、自分で何とかするとかやる事あるだろ!!」

私の低い声が学校の廊下に響き渡る。


「あ、あー。そうだよな……」

名前も知らない男子生徒がビクリと身体を反応させた。


「ふんっ!!」

ったく、男なんて頼りにならない生き物なんだから。
目の前から逃げて行く男子生徒の背中を見ながら、大きな溜め息が漏れる。



「あ、いた。花本さーん、深澤くんが……」

「今忙しいから、ほっといて!」

全くどいつもこいつも私の顔を見れば、リキ、リキって……。


最初からこうしていれば良かったんだ。
先生に何を言われようが、リキが泣こうが、何してようが何も見ないフリして放っておけば良かった。