柔らかい唇に人差し指を当ててから、キスを1つ落とした。そのまま頬に残る涙のあとをペロリと舐める。



「しょっぱいね」

「……も、だい」

何か言おうとしているのは分かるけど、そんな台詞なんて最後まで言わせない。


「だ、大丈夫…だか」

こんな台詞のやり取りなんて、周りの騒がしい声にかき消されてしまう。
リキが両手を伸ばして私を離そうとするけど、そんな事は気にせずまたキスを続けるけど。




「ハ、ナちゃん…」


リキの歯切れの悪い言葉と共に予鈴のチャイムの音が耳に入るから、名残惜しいリキのふんわりとした唇からいったん離れた。


「な、なんで…こんな事」

目の前には頬を赤くさせるリキがいて


「だって泣きやむじゃん?」

私はそんなリキを見るのが面白くて、小鳥の様に軽くキスをしてから、からかい半分に笑ってみせた。


「……だけどさぁ」

「教室戻ろっか」

「う、うん」

まだ、納得のいかないようなリキは何か言いたげだったけど。ここは教室から少し離れた人通りの少ない渡り廊下という事もあり、私達は急いで教室に向かって歩き出した。