「あり得ねぇよなー」

「男連れてくれとか無い無い」

最初に耳に入ったのは先輩のクラスメートと思われる男の人の声。

先輩のクラスの教室のドアは閉まっていて、笑い声混じりの会話が教室の外まで聞こえてきた。
廊下は騒がしいのに、ドアの前に立つ私の耳まで入ってくる。



「まだ子供っぽいよな」


これは、私の事──?


「泣き虫野郎のお節介だろ?あれ」


胸がドクンと大きく脈打った。


「あー…」

聞きなれた優しい筈の低い声が、歯切れの悪い返事の仕方をする。
だから、きっと先輩は私を庇ってくれる訳では無いのだと、とても嫌な予感が頭を過る。