旧校舎の2階の廊下から音楽室の窓をのぞけば、癖っ毛のある真っ黒で柔らかそうな髪の毛の頭が半分だけ見えた。

誰にも呼ばれた訳じゃないのにリキを見付けられるのは、ある意味、特技になっているのかもしれない。


まぁ、こんなの特技なんていわないのかもしれないけど。



「先輩、彼氏いるんだってね」

なんて壁に寄りかかって座っているリキの姿を上から覗き込んだ。



「……知ってたよ」

どんな顔をしているのだろうか。
当の本人は振り向きもしないまま、返事が戻ってくる。