先輩の彼女

白石さんのやる気の無さに、少しだけがっかりしながら、私も白石さんの側にある段ボールを、手で開けた。

「で?なんて言うタイトルだっけ?」

「妖草です。」

「どんな話?」

「すみません。私も初めて聞く名前で、全く分からないんです。」

白石さんは、欠伸を一つした。

「斎藤さんが知らないって事は、少なくても3年以上前のタイトルだね。」

私は段ボールを開ける手を、途中で止めた。

「だって編集部に入った時、大抵のタイトルは覚えさせられたでしょ。」

「はい。」


そうだ。

その私が聞いた事ないって、本当に聞いた事ない?

それとも、私が覚えていないだけ?


「検索でも出てこなかったし。これ、全部の段ボール開けないとダメかな。」

益々やる気を無くしている白石さんを放っておいて、私は、段ボールの中を探し始めた。

ラッキーな事に、段ボールに入っていたタイトルは、私が編集部にいた時に、関わっていたモノだ。