「いってきます。」


誰もいない暗闇に向かって、笹原エリコはそう言った。



容姿端麗、成績優秀。
一見非の打ち所も無い彼女は、ホームレスだった。



親は出稼ぎに行ったっきり帰って来ないし、
中学生の妹は大学生の彼氏の家で暮らしている。


暗くて寒い冬も、
台風がきた夜も、
ずっとずっと、ひとりぼっちだ。



もしかしたら、親に裏切られたのかもしれない。

でも彼女は、笑顔で家族の帰りを待った。