土曜日の午後。



「あれ、何号室だっけ」

「825ですよ」

「あ、そうそう。ありがとうちさき」



さっき受付で聞いた部屋番号を、ものの見事にすぐさま忘れた理央先輩。

隼人先輩がいたらため息つかれてるだろうなぁと笑ってしまいながら病室を目指した。


袋の中には、青葉先輩の大好きなエクレアとゼリーと、理央先輩おすすめの少年漫画を何冊か。

――…そして、監督と阿部先生からの手紙。


監督の手紙の封筒には、筆で「藤枝青葉様」と達筆に記されていた。

…いかにも監督らしくて、理央先輩と顔を見合わせて笑ってしまった。



青葉先輩、何してるかな。元気だといいな。

…驚かそうと思ったのにー、なんて笑顔を見せてくれるかな。そうだといいな…。



――コンコン



「はーい」