「面会できる時間、1時間もなくて申し訳ないんだけど…」

「いいんです、青葉先輩に会えるだけで十分です。まずは10分を目標に」

「…ふふっ、ありがとうねちさきさん」

「いえ、そんな…」

「本当にありがとう。青葉のこと、よろしくお願いします」



あやめさんは、わたしとともに青葉先輩に会いに行くということを噛み締めるようにして再度そう言った。

…お礼を言うのはわたしのほうだ。あやめさんと出会えなければ、今こうしてもう一度彼に会いに行くきっかけすら作れなかったわけで。


大嫌いだという言葉の裏側を知ろうともせず

知ったとしても、本音なのかもしれないと決めつけて、向き合うことをやめてしまっていたと思うから。



静かな病院内。わたしたち以外にお見舞いに来ている人もいるようだった。

あやめさんは慣れたようにエレベーターのボタンを押し、すれ違う看護師さんにあいさつをしながら彼の病室へと向かう。



――…ドクン、ドクン。

その鼓動が脳内で繰り返し重さを纏うくらいには、緊張してしまっていたけれど



「じゃあ、ノックするね」

「はい」



不思議と怖さは微塵も無かったんだ。