あいつの温もりを腕の中に閉じ込めたい。 誰も知らない千夏を見てみたい。 独り占めしたい。 けど、それって単なるエゴなのか? 外を出ると空はもう夜の色。 吐く息が白くなり、手がかじかむ。 都会だから星は見えないと諦めていたがキラッと何かが瞬いた。 「…まだ、星見えるんだ……」 そう漏らしながらジャケットを羽織り、足を進める。 時折吹く風に体温を奪われる。 あまりの寒さに耐え切れなくなり、俺は自販機の缶コーヒーを買おうと路地裏に入った。