今、

なんで泣いてるのか、理由がわからない。


こんな聖なる夜に。


みんなきっと楽しいのに。




私だって、楽しかったのに。




バイト先で閉店作業をしながら、



(そう言えば、今日はまだクリスマスソング歌ってないなあ)


なんて考えて、



帰りに一人で熱唱して帰ろう

って一人ガッツポーズなんかしてたから。





大好きな曲で、


冬じゃなくたって熱唱してる曲で、




いつもは歌ったって感傷的になんかならなかったのに。







今年は違うんだ。






貴方との、


記憶があるから。





胸の中か、




頭の中か、





わかんないけど、どっかに。






たった一年間だけど、貴方を追いかけて


少しでも視界に映りたくて



側にいられる幸せをわかりきってなくて




叶わないって

敵わないって




わかってたけど、なんとなく信じてた。






もしかしたら来年は、、

なんて考えてた去年の私。







春が近づいて



でも困らせたくなくて言えなくて。





側にいられなくなって。







切り替えられる気がしてたのに






思い出しちゃって。







本当は、会いに行こうと思えば会いに行けるから



だからむしろその距離が



会いに行けない、行っちゃだめ、って



私の足かせになった。






母校の制服を見るたびに目が潤んで


校舎を見るたびに喉が締め付けられた。






会いたかった


のに



会ったら泣いてしまうってわかったから



困るかなって思ったら余計に会えなかった。








でもそうやって我慢すればするほど会いたくて仕方なくて。




どうにも止まらない。





いつまでもこうしてられない



とか考えて、




視野を広げて見つけたのは






一人の男の子。







私だってまだ恋ができる。


貴方じゃなくても恋に落ちる。



やっと思い出にできる、って



思った




のに






なんかおかしいな



デジャヴかな





その横顔が、

眠たそうな目が


面倒くさがりな仕草が



もう、







貴方に似ていて苦しくて。








結局貴方しか見えてないことにまた打ちひしがれた。








貴方が好き。




貴方が好き。






会わないのに、


届かないのに。








決心して、





泣かない私を繕って、





会いに行きましたね。








友だちには


「別に会えなくてもいいし

会いたくないよ?」




なんて笑いながら言ってたっけ。







でもそんなの強がりで




貴方に会えた瞬間



その声が鼓膜を震わせた瞬間





貴方の目に私が映ったって思った瞬間





なんかもう全部が溢れた。






抑えてた言葉も

気持ちも


表情も、





全部ぜんぶ出てきそうになって


焦って。





それでも、


「会いに来ました!会いに来たんです!」




わけわかんないこと言いましたよね。



びっくりしましたか?




私は、


びっくりしました





けど、





やっと、それでも少しだけど



素直になれた自分が嬉しかったです。









同時に、もう言える、言ってもそれほど困らせない時間になったことに今さら気づいた。









今日しかない、



なんてバカみたいに慌てちゃって。











あのあと、







私は泣きませんでしたよ。





むしろスッキリした、なんて思ってた。




言いたくて言いたくて、言いたくて、




それでも言っちゃだめだから閉まってた言葉を



やっと伝えられたから。







だけど、次の日、私が会いに行ったせいで




貴方のいつもどおりにしようとしてくれる姿勢を



貴方の少しぎこちない笑顔を




貴方が気にかけてくれる視線を






避けてしまったから。







割り切れてない自分に情けなくなった。






優しすぎる貴方に苦しくなった。






また好きが増して、





でも、今度こそもう振っきらなくちゃいけなくて。









私にとって本当に大きな恋だったことに改めて気づいた夜だった。






横顔を思い出すだけで言葉が出なくなった。




そこに誰がいようと、涙は出そうになるし



深呼吸をすれば喉がきつくなる。






泣いても泣いてもまだ涙は枯れなくて。



泣いても泣いても思い出してしまった。




呼んでも届かない。



それでも呼びたくて。




ただ、貴方の名前を呼びたくて。







あれから何日泣き続けたんだろう。





昼は苦しくても涙は堪えられたのに





夜になると本当にだめで。





一人になると、本当にだめで、、。







それなのに、誰にも側にいてほしくなかった。





どれだけ泣いても意味はないから。


そんなことわかってるから。







このままじゃ、いつまで貴方を引きずるのかわからなくて、





そろそろ、





今はまだ思い出にできなくても、

思い出にする努力をしなくちゃって決めて。







貴方の誕生日





一年前に、私がプレゼントを渡した日






何が良いか、何なら受け取ってくれるか、





わからなくて、悩んで、





でも




そんなのが無性に楽しくて、嬉しくて





そんなことしてたのを思い出しながら、






「おめでとうございます」




って、LINEを送ろうとしてやめた。








打ち込むことすらしなかった。







これで、






何も言わないことで、







貴方にけじめをつけよう。






その日を限りに、


貴方のことを考えるのをやめるように努力した。







それでも、








一日に数回必ず思い出して。







だけど、楽しい記憶を思い出すと、





それでもあんなに泣いてたのに




笑えるようになって。









もう楽しい気分で思い出すようになった。












貴方の話題を、笑って流せるようになった。













頑張ったなあって思ってて、





やっぱり一日に何回も考えてしまう貴方のことを、










今日は、







この聖なる夜は、









ーー 会いたいと毎日思ってて

それを君に知ってほしくて



すれ違う



人混みに君を




探している




こんな日は




他の誰かと


笑ってるかな ーー








そんな歌詞に、




辛くなって





喉を抑えて





しゃがみこんだ。










こんな日だけど、




こんな日だから、







貴方を考えても良いことにした。










だって、



辛くて。








貴方が今この時間、幸せならいっか




って思うくせに





でも隣に女の人がいたらやだなあって





思うし。






LINEのトーク画面に降る雪を見て、


私とのLINEを思い出してくれたりしないかなあって



思うし。






でも、隣に誰も女の人はいないとして、




貴方が思い出したとして、






私にLINEを送ってくれたりなんて


絶対にしないから。




わかってるから。





絶対しない、規律を気にする中途半端に真面目な貴方、




だから好きになった。




そこが特に好きだった。





だけど、





そのせいで苦しい。








矛盾だらけだけど、





聖なる夜だから、みんな幸せだから、笑顔がたくさんだから、歌がたくさん聴こえるから、






私くらい、許してほしい。







貴方を思い浮かべて泣きじゃくっても


許してほしい。












貴方が思い出になるまでが、







私を強くするって









貴方はそう信じてて?










きっとそうするから。






強くなるから。








思い出になるまで、




まだもう少し。




















ーーFinーー