「気にしてないわ。それより、いつものパンを頂戴」

「はいはい、いつものね」


困り笑顔のおばさんが紙袋にパンを詰めてくれている間に、クロが会計を済ませる。


「460f(ファイル)だ」

「…はい」


お金を差し出すと、無言で受け取って無言でお釣りを返された。必要最低限の事しか喋らないクロに、少しイラッとする。


「はい、ティア。いつもありがとうね」

「ううん、こちらこそ。いつも明るい笑顔と美味しいパンをありがとう」


おばさんからパンを受け取り、満面の笑顔を浮かべてわざとらしく言ってみる…が、クロは私の声なんて聞こえていないかのような顔で、パンを並べ始めた。


「…また来るね」


おばさんにそう伝え、とぼとぼと歩き出す。


別に私はクロと喋りたい訳じゃない。だけど、無視されるのは気に食わない。かと言って私があんな態度を取れば、逆効果だという事も理解している。


「はぁ…」


(これじゃ、仲良くなんてなれないわ。いや、なりたい訳じゃないんだけど)