「…美味しい!」

「だろう?」


満足そうに笑うおじさん。

(この実…見た目は胡椒なのに、噛めば噛むほど甘さが増してくるわ)


「じゃあ、これと(ソルタ)一袋ずつ下さい」

「まいど!」


手早く詰めてくれたおじさんから品物を受け取り、代金を渡して次の店に行く。目指すのは、パンを売っている露店だ。


この世界の主食はパンだけで、お米と麺類はない。だからこそ、パンの種類は豊富だ。ざっと200種類はある。


「おばさん、おはよう」

「あらティア、おはよう」


パンの露店を出しているのは、近所の家に住むおばさんと、そこに居候している私と同い年の男の子、クロ。


「クロもおはよう」

「………」


(無視…まあ、いつものことだわ)

いつもの事なのに、ため息が出てしまう。


「ごめんなさいねティア。クロったら、ほんとに人見知りで…」


おばさんが小声で謝ってくれたけれど、おばさんは悪くない。悪いのは、クロの態度だ。