私の朝は、市場に行く事から始まる。

この国最大の都市であるここ、ファルファータの市場は、港に面している事もあり、各国からの輸入品が数多く並んでいる。


いつ来ても胸躍るこの場所は、私のお気に入りでもある。


「おはよう、ティア。今日は早いね」


香辛料の露店を出している顔見知りのおじさんが、声をかけてきた。


「おはようおじさん。今日は早く目が覚めちゃって」


答えながら、おじさんの屋台に並ぶ香辛料を端から端まで見てみる。


「…ん?おじさん、これ何?」


前世で見た胡椒の実にそっくりな香辛料を見つけ、思わず手に取った。


「ああ、東の国から新しく入った香辛料さ。ものすごく甘いんだ、食べてみな」


「え」


笑顔のおじさんに手渡され、少し躊躇う。

(そもそも、これは本当に甘いの?胡椒みたいだし…でも、せっかく貰ったのに食べないのは失礼よね)


「い、いただきます」


意を決し、口の中に放り込んだ。