最期の時まで、1秒でも長く、1mmでも遠くへ……なんて、この逃げ場のない屋上では考えても虚しいだけ。


私は柵を掴み、それを乗り越えると、屋上の縁に立った。


「な、何してるの? そんな所にいたら……」


と、そこまで言って、その言葉にはなんの意味もないと気付いたのだろう。


真倫ちゃんは私に近付いて、同じように柵を乗り越え、私の隣に立ったのだ。


「どうせ死ぬなら……私、真倫ちゃんと一緒がいい。真倫ちゃんと一緒なら……怖くない」


「うん。愛莉……ずっと、大好きだったよ。一緒にいこう。ずっとずっと……一緒に」


真倫ちゃんの腕に抱き締められたと同時に、屋上のドアが開いてイーター達が駆け寄ってくる。


それを横目に、私と真倫ちゃんは顔を近付けて。


そっと、唇を重ねた。


あれだけ怖くてたまらなかったイーター達にも、もう恐怖は感じなかった。


私がここから飛び降りようとした日、絶望に包まれていて。


だけど今は違う。


真倫ちゃんと一緒にいられる幸せを感じながら。


柵に押し寄せたイーター達。


手を伸ばし、私と真倫ちゃんを掴もうとしているけれど、私達は捕まらない。


「ごめんね愛莉。私が男の子じゃなくて」


「んーん。私は……真倫ちゃんだから好きだったんだよ」


そう言って、下を見た。








「真倫ちゃん……大好き」









私達は、抱き合ったまま屋上から飛び降りた。


あの日、飛び降りるのを諦めた私が……同じ場所から飛び降りて終わらせようとしている。


ごめんね、皆。


皆は必死に生きようとしていたのに、私は。


学校の裏側、イーターもいないアスファルトの上。


真倫ちゃんをギュッと抱き締めて。










ドンッと、身体の中から音が聞こえた。