「春瑠さん、これってまさか……」


「未来さんも気付いた? 勘違いだって思いたいけど……どうやらそうみたいだ」


後部座席の盛り上がりとは打って変わって、沈んでいる様子のふたり。


「え、え? 何かトラブルですか? せっかく逃げ出せたのに」


と、私が尋ねると、春瑠さんは首を横に振った。


「確かに町から逃げたはずだ。道は一本で、間違えようがない。と言うかありえないんだ! あのトンネルを抜ければ隣町、そうだろう?」


パパやママと買い物に行く時に、この道は通るからわかる。


国道をずっと走れば隣町に着くわけだから。


「い、一体何を……」


そう私が言った時、私は道の脇にある看板を見てしまった。







『ようこそ! 中浜町へ!』









中浜町……えっ!?


どうして!?


私達が住んでいた町が中浜町で、私達はその中浜町から逃げて来たのに!


どうして、中浜町に戻って来たの!?


「なになにぃ。なんでそんなに沈んでるわけぇ? もっと幸せを噛み締めようぜ」


「桐山……あんた今の、見てなかったわけ? 私達、中浜町に戻って来たんだよ!? わかる!? 逃げられてないんだよ!」


真倫ちゃんのその言葉は、悲鳴にも近い物だった。