食事を終え、お風呂に入る。三実さんは業務の続きなのかパソコンと向かい合っていたり、母屋に行ってお義父さんやお義兄さんたちとお仕事の話をしていることも。だけど、私が布団に入る12時には必ず帰ってくる。私がくたびれて眠りこけてしまわない限りは、眠るタイミングが一緒になったのだ。これは大きな出来事だ。

「幾子、眠るか?」
「はい」

並んで布団に入る。すでに季節は七月。暑くなり、私は以前のように浴衣を寝間着にしている。三実さんも浴衣姿なんだけれど、本当にこの人はこういう格好がよく似合うと思う。
横になると、三実さんが手を伸ばしてきた。

「手を繋ごう」
「はい」

私は布団の中で彼の手を握り返す。

「明日は幾子も出勤だったな」
「ええ、明日は麻生さんご夫妻と倉庫全体の備品カウントをするので、ちょっと大変そうです」
「そうか。麻生夫妻と言えば……」

そう言って、麻生さんの昔の話を始める三実さん。手を繋いでいる現状に、気を遣っているわけじゃない。この人が私ともっと喋っていたいのだ。そう感じると、本当に可愛い人だなあと思う。

「三実さん、そろそろ寝ないと」

くすくす笑いながら話を切りのいいところで止めると、わずかな間。

「なあ、幾子」

私の手を捉える力がぎゅっと強くなる。

「キスしてもいいか?」