「よし、じゃあ何枚か……」
「ごはんが冷めます。写真は駄目です」
「俺の携帯に最新の幾子がいないのは困る」
「困りません」

早くも脱ごうと脱衣所に向かいかけると後ろから三実さんに抱き締められた。

「参った。妻が愛しすぎて、苦しいほどだ。幾子、本当におまえは可愛い」

身体に響く低い声に、なんともいえない気持ちになる。
その気持ちの半分以上を占めるのは『恥ずかしい』という感情、そして三割くらいに『嬉しい』という感情が混じりだしたのだ。容姿を褒められているというより、三実さんに好かれていることに純粋に喜びを感じ始めている。

初めてのデートとキス以来、三実さんはストレートに気持ちを伝えてくるようになった。
以前は自制を効かせるためなのか、距離をとっていたし笑顔も作りものみたいだった。その頃が嘘みたいに表情豊かだ。

好きだ、可愛いは毎日言われ、私が照れればそんな顔も最高だと写真を撮られる始末。季節ごとに私の写真集を作りたいと真顔で言うのでかなり重症の変人だ。

結婚してもう少しでふた月、やっと見えてきた彼自身に、嫌な気持ちはまったく感じない。変わった人なのは明らかだし、私への愛情が深すぎてねじれてる気はするし、あの猛獣みたいな激しさも彼の中にある。
だけど、それらを丸ごとひっくるめて、金剛三実という人を理解し始めてきた。

「三実さん、週末どこかお時間があればデートしましょう。私、このワンピースを着ます」
「デートか。いいなあ、それは」
「写真はそこで。ね?」
「そうしよう!絶対に時間を作る。海のほうまで行ってみようか」

この人は私の夫。これからずっと一緒にいる人。もっともっと好きになっていきたい。