諭は私の非難めいた声も無視で正面の三実さんを見つめて笑顔だ。

「そっくりやと思いません?」

え?
その言葉に固まったのは私だった。緩んだ手を肩から外し、離れて諭を見つめる。私はたぶん呆気に取られた顔をしている。

「諭さん、それは」

三実さんが答えに窮したところにかぶせるように諭が言った。

「俺と幾子お嬢さんは本物の兄妹です。腹違いっちゅうやつです」

絶句した。私と諭が兄妹?
つまり、母の疑いは当たっていたということ?諭の亡くなったお母さんは父の愛人だったという……。

「甘野社長に引き取られた時点でそらぁ問いただしてますよ。自分の出生の秘密を知る母親が死んでんのやから。『公には認められないけどおまえは息子や』って言われてます。だから、俺は幾子お嬢さんを最初の最初から妹として見てきました」

諭はそう言うと、トンと私の背を押した。三実さんのところに押しやるように。三実さんが私の腕を掴んで自分の近くに引き寄せる。

「そんなんで三実さんが俺たちの仲を勘ぐったり嫉妬したりしはる理由はないんやで~って伝えにきたんです」
「そ、それを言いに?」

まだショックで声が震える私に諭は心外とばかりに言う。

「その言い草はなんや。俺は妹の幸せを願ってわざわざ仕事の合間に飛んできたんやぞ。前回のランチ、三実さん、そらもう不機嫌やったからなぁ。大方、俺とお嬢さんの仲を不審に思うとんのやろ、とな」

三実さんが額を抑え俯き、それから顔を上げて笑った。

「いやぁ、お気遣い申し訳ない。恥ずかしながら嫉妬してしまいました。今日は幾子にお詫びを兼ねてデートだったんですよ」