猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~

「しかし、下が短かすぎたな。幾子の綺麗な脚がよく見えてしまう。離れ以外で着てはいけないぞ」

からっと笑う彼は野獣な彼とは対極だけれど、得体の知れなさは同種のものを感じる。まるで感情を感じない。
私、とんでもない人のところにお嫁にきてしまったんじゃないかしら。

「ほら、写真は終わりだ。こっちでお茶を飲もう」

彼に腰を抱えられ、身体を起こす。ソファの隣に移動させられる。
湯呑みを手渡されても、まだ半分くらいパニックな気持ち。嫁いで数日、すでに旦那様が意味不明だ。

……あ、もしかして、これは嫌われようとしているのかしら。

はっとして私は横の三実さんを見あげた。
そうだ。政略結婚で12歳も年下の嫁をもらって、この人も困っているに違いない。私に嫌われて穏便に離婚に持っていこうとしているんじゃあ……。

すると、三実さんがじっと私を見つめ返す。はっきりした顔立ちの人が真剣に見つめてくると結構迫力がある。間近で見ると、やはり男らしく素晴らしく整った顔だ。

「幾子、そんなに見つめると可愛らしすぎて襲ってしまいそうだ」

茶化して言う彼。私はごくんとつばを飲み込んだ。

「み、三実さん……腹を割ってお話してほしいのですけれど」

いい機会だ。直接聞いてしまおう。三実さんが最初から気乗りしない結婚であったなら、私が頑張るのも無意味だ。お互いやり直せるうちに解消してしまった方がいい。

「私のような子どもがお嫁にきて、お困りではないですか?」
「なぜだ?」

打てば響くスピードで返され、私はたじろぐ。言葉を探してしどろもどろになってしまう。