猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~

その日の夜は、三実さんが少し早く帰れるというので一緒に夕食を食べることになった。
私からは話すことがない。三実さんも「調子はどうだ?」と私に聞いてからは、食事の内容や今日の天気などとりとめのない話をつらつらとしている。
盛り上げようと話を振ってくれているのかしら。注意深く観察するけれど、気遣ったり無理している様子は見えないので、やはり少し変わっている人なのだと思う。マイペースというかなんというか。

食後に、私がお茶を淹れた。タイミングとばかりに、彼は廊下に置いてあった荷物を取り出してくる。

「幾子、プレゼントをもらってくれ」

プレゼントって昨日の朝もらったばかりですけれど。おずおずと三実さんの顔を覗き込む。

「あの、プレゼントって」
「これもまたぜひ着てみてほしい」

ぱっと明るく言われてしまうと拒否する理由がない。手に押し付けられたセロファンで包まれリボンをかけられた大きな袋。仕方なく、脱衣所で着替える。
もこもこのこれは……。

「部屋着……ですか?」

三実さんの前にそろりと出ていく私はもこもこ素材のルームウェア姿だ。パーカー型の上着はフードにうさぎの耳がついている。
下はショートパンツなので脚が丸見えだ。そして、なぜか丸いしっぽがついている。

これは……どこの誰向けのコスプレなの……?