「私、ずっとひとりだ」

ぞっとした。朝食は楽しく会話する場所ではなさそうだし、そもそもできたばかりの家族なので親しい関係ですらない。
昼食はこの先もひとり。夕食も三実さんがいなければひとり。

そして、荷物整理が終わったとき、私にはやることがなくなるのではないだろうか。
背筋を寒くしながら、食事を終え、風呂に入り、少しテレビでドラマを眺めてから日付が変わる前に布団に入った。


次に目覚めた時は朝だった。

「おはよう。幾子」

私の隣の布団で身体を起こしているのは、三実さんだ。私が眠った後に帰宅したのだろう。起きて待っていた方がよかったのだろうか。だけど、ゆうべは例の機会にならずに、正直ほっとしている。

「おはようございます」

寝間着の浴衣姿が視界にあり、はだけたたくましい胸元に心臓が跳ねあがってしまった。慌てて視線を外す。男性に免疫のない私としては刺激的すぎる光景でした……。
三実さんは私の焦りなど気づかない様子で、髪の毛をかきあげ言う。

「朝食まで少し間がある。俺の贈り物を受け取ってくれないか?」
「?え、あ、はい」

リビングに移動し、ローテーブルに包みが置かれてあるのを発見した。
三実さんのプレゼントはどうやら服のようだ。パッケージを開け、深い赤のドレスが目に入って面食らう。派手だわ……。
戸惑っていると、三実さんが笑顔で言う。

「着て見せてくれ」
「今からですか?」
「ああ、そうだ」

朝からドレス試着?
頭にハテナマークを浮かべつつ、せっかくのプレゼントだしと頷いた。