「志信の土産だけで相当高額じゃないか。そんなに志信に貢ぐな」
「あはは、お金も預かってます。その分、本気度が高いと言いますか」
「幾子は志信に甘すぎる」

三実さんが珍しく不満げなのは、たぶん嫉妬してるから。老若男女問わず、私と距離が近い人間にはばりばりに嫉妬オーラを出してくる三実さんは、可愛いというか凶暴というか……。

「いいじゃないですか。私たちの新婚旅行も兼ねてるんですから、奮発しましょうよ」
「新婚旅行についてはいいがな。そうそう、幾子のお母さんと話せることを楽しみにしている」
「強烈な人ですけど、よろしくお願いします」

母はまだ三実さんを誤解しているんじゃなかろうか。政略結婚で私が我慢して暮らしていると勘違いしているなら、訂正してこなければ。

「ところで、俺はあまりお母さんから好かれていない様子だ。結婚式に参列してもいいものか」

三実さんの言葉にぎょっとした。なぜ、そのことを知っているのだろう。言葉にしなくても私の表情でわかったようで、三実さんが付け加えて言う。

「挙式の時の様子で信用されていなさそうだとは思っていた。幾子に離婚して自分のもとへ来いと言っていたのも聞こえていたよ。それに、俺の身辺を調査しているのも知っている」

披露宴最中の内緒話、聞こえていたのね。しかも調査の件は私も知らない。さらりとなんでもないことのように答える三実さんに、慌ててしまった。

「調査まで……それは知りませんでした。無礼な母ですみません」
「幾子を愛していればこそだろう。俺は今回の旅行で、今後幾子を守る役目をお母さんから引き継ぐつもりだがな」

まったく気にしていない三実さんを見て、つくづくこの人が夫でよかったと思う。変わり者の義母に調査までされていたら嫌な気分になって当然だろうに。

まあ、この人の方が何倍も変わり者なんだけど。