搭乗手続きを済ませ、私と三実さんはラウンジにいた。初めて入ったVIPラウンジはアルコールや食事が充実している。なんでも食べていいそうだ。
三実さんはお腹が減ったとホットドッグやパスタ、ビールを楽しんでいる。

「そんなに食べると機内食が食べられないんじゃないですか?」
「大丈夫。この程度じゃおやつにもならないよ」

にこにこ笑顔で食事をしている三実さんに私はひそかにため息だ。飛行機って実は苦手なのだ。
これから、私と三実さんはイタリアに向かって出発する。私の母の結婚式に呼ばれているのだ。

「ローマまではアリタリア航空で直行。13時間くらいかな。乗り換えてミラノまでだったな」
「やっぱり遠いですね」

ファーストクラスとはいえ、閉塞感はあるだろうし、ずっと座りっぱなしなのも嫌だ。
なにより、鉄の塊が空を飛ぶことにいまだに恐怖感がある。高校の修学旅行でアメリカに行った時は、わざわざ病院で睡眠薬を出してもらってフライト時間は眠って過ごしたくらいだ。

「幾子はなんのメモを取っているんだ?」

三実さんが私の手帳を覗き込む。見られて困るものじゃないので広げて見せた。

「お土産リストです」
「麻生夫妻に、植松さん、金剛の家族に、諭さんとお義父さん……。幾子、信士はわかるが、志信への土産はなんだ」

手帳の半分を占めるのは志信さんからのお土産希望リストだ。イタリアに行くと言ったら、がっつり希望を送ってきた。
限定の化粧品、服飾品、インテリアの数々はさすが志信さん。どこで買えるかまで調べているので、これは『お土産によろしく』ではなく『何が何でも買ってこい』の意味だろうなと思う。