大きな手が私の両の頬を包む。
温かい。見上げた彼はどこまでも優しく微笑んでいた。

「今、俺には幾子と愛し合っている実感がある。幸せだ。子どもがいなくても、俺たちの心が結ばれていると信じられる。無敵だ」
「三実さん……」
「赤ん坊が産まれたら、それは嬉しい。しかし、いなくても俺の愛が変わることはない。それとも幾子は子どもがいなければ、俺への愛が薄れてしまうか?」

私は首を振った。鼻の奥が痛く、目尻に涙がにじんできた。

「いいえ。どんなことがあっても三実さんを愛しています」
「俺もだ。何があっても幾子ただひとりを愛する。だから」

三実さんが腕を広げる。私は迷わずその腕の中に飛び込んだ。

「俺の傍にいてくれ。一生、離れることなく」

涙が溢れた。
愛した人の腕の中は、温かくもったいないくらい幸福で、私は彼の胸にしがみついて泣いた。

「ずっと一緒だ。死んでも、来世でも」
「はい、私も一緒がいい。三実さんのお嫁さんになれてよかった」

三実さんの腕が強く私を抱き締める。

「私を見つけてくれてありがとう。大人になるのを待っていてくれてありがとう」

出会ったこと、愛されたこと、愛したことを大事に生きていきたい。
この人の隣が、私の居場所だから。

「幾子、愛しているよ」

もどかしく唇を重ね、私たちはきつく抱きしめ合った。