「夏にデートした海を覚えているか?」
三実さんが運転の合間に言う。
「あのフレンチレストランに行こう」
「……今からですか?」
「一時間ほどで着く。もう連絡も入れたしな」
道は夕方なので少々混んでいたけれど、目的地には一時間ちょっとで到着した。車を停車させ、三実さんは私を車に残し店内に声をかけに行く。すぐに戻ってきて、助手席のドアを開けてくれた。
「おまたせ。幾子、少し海を見てこないか?」
「海……」
夏に一緒に遊んだ小さな海岸はこの駐車場から階段を降りてすぐだ。
「寒いのが嫌ならやめておくが」
「いいえ、大丈夫です」
私は三実さんについて階段を降りる。私たちが遊んだ砂浜は潮が満ちて海水の底になってしまっていた。
三実さんが手を差しだし、私は右手を重ねた。階段を途中で逸れ、平らな岩場に出る。見れば、ベンチと手すりが整備されている。この前着た時はちゃんと見なかったけれど、ここは展望台になっているのだ。
ふたりで手すりに並び、暗い夜の海を見つめた。
今日は風もなく、静かに打ち寄せる波の音が聞こえる。
点在する舟の灯りが寂しくも美しくて、茫々と広がるそこが、どこか違う世界みたいに見えた
「今日、病院に行ったのか?」
驚いて三実さんの顔を見上げる。三ヶ月前の検査は三実さんも知っていたけれど、そこからこそこそ三ヶ月画策していたことを彼は知らないはずなのだ。三実さんは優しく瞳を細め私を見下ろしていた。
「幾子のことならなんでも知ってる。ストーカーだからな」
「もう……」
少し笑ってみせたけれど、やはり私の表情は沈んでしまう。でも言わなければ。ここで隠しても仕方ない。
三実さんが運転の合間に言う。
「あのフレンチレストランに行こう」
「……今からですか?」
「一時間ほどで着く。もう連絡も入れたしな」
道は夕方なので少々混んでいたけれど、目的地には一時間ちょっとで到着した。車を停車させ、三実さんは私を車に残し店内に声をかけに行く。すぐに戻ってきて、助手席のドアを開けてくれた。
「おまたせ。幾子、少し海を見てこないか?」
「海……」
夏に一緒に遊んだ小さな海岸はこの駐車場から階段を降りてすぐだ。
「寒いのが嫌ならやめておくが」
「いいえ、大丈夫です」
私は三実さんについて階段を降りる。私たちが遊んだ砂浜は潮が満ちて海水の底になってしまっていた。
三実さんが手を差しだし、私は右手を重ねた。階段を途中で逸れ、平らな岩場に出る。見れば、ベンチと手すりが整備されている。この前着た時はちゃんと見なかったけれど、ここは展望台になっているのだ。
ふたりで手すりに並び、暗い夜の海を見つめた。
今日は風もなく、静かに打ち寄せる波の音が聞こえる。
点在する舟の灯りが寂しくも美しくて、茫々と広がるそこが、どこか違う世界みたいに見えた
「今日、病院に行ったのか?」
驚いて三実さんの顔を見上げる。三ヶ月前の検査は三実さんも知っていたけれど、そこからこそこそ三ヶ月画策していたことを彼は知らないはずなのだ。三実さんは優しく瞳を細め私を見下ろしていた。
「幾子のことならなんでも知ってる。ストーカーだからな」
「もう……」
少し笑ってみせたけれど、やはり私の表情は沈んでしまう。でも言わなければ。ここで隠しても仕方ない。



