猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~

「赤ちゃんできてないみたいです」

三ヶ月後の月経後、私は大学病院の産婦人科を再び訪れていた。

「うーん、まだ三ヶ月ですからねえ」

若い医師は笑顔で言う。

「不妊の定義は避妊なしで性行為をして一年妊娠に結びつかなかった場合を言います。一応ね」
「はい、でも……その」

夫に赤ちゃんを見せてあげたいんです。三実さんは、私がお嫁入り当初から言っていた。俺の子どもを産んでくれって。
だから、赤ちゃんを抱かせてあげたい。
「ご夫婦で希望があるようでしたらご主人も検査ができますよ。ご一緒に来院されてはどうでしょう。ただ、何も問題がなくても妊娠に至らない場合はたくさんあります」
「原因不明ってことですか」
「そうですね。原因不明の不妊は実は結構あります。ですが、今は様々な受精方法がありますし、こちらでできる治療もたくさんあります。まずは検査ということで、ご夫婦でお話をしてみるのはどうでしょう?」
「はい……」

決定的なことを言われたわけじゃなかった。それなのに、大袈裟だとは思う。
だけど、家路につく私の足取りは重かった。

結婚してそういうことをしたら、赤ちゃんは自然にできるものだと思っていた。そんなに簡単なことじゃないんだ。
そのことに少しだけ打ちのめされていた。

三実さんには病院に行くことを伝えていない。それどころか、この三ヶ月、赤ちゃんができるようにとこそこそ頑張っていたことすら知らない。
そして、改めて言葉にできる自信がない。
もしかしたら、赤ちゃんを授かるために検査をしたり治療をしたりしなきゃいけないかもしれない。さらにそれでも授からない可能性だってある。