四人でワインを飲み、おおいに話した。諭と父は近くのビジネスホテルに宿泊だそうで、私たち夫妻は帰途についた。

「楽しかったな!」

三実さんは心からそう思っている様子で明るい表情だ。

「お付き合いしてもらって嬉しかったです」
「幾子の家族は俺の家族だ」

三実さんは言葉を切って言う。

「家族には色々な形があるな」
「そうですね。私の家族は、今になってようやく収まるところへ収まった感じです」

私の嫁入りを機に両親は離婚し、新たな道を進み始めた。実兄であるとわかった諭が、正式に甘屋デパートの後継者になった。これらはすべて、今のタイミングだから上手くピースがはまったに違いない。

「俺も長いこと、立ち位置を探していた気がする」
「三実さんが?」

それは幼少期からの話だろうか。見上げた三実さんは夜の冷たい空気を吸い込み言葉にする。

「末っ子だから可愛がってもらったけどね。いつもどこかで枠の外にいる気がした。金剛は兄たちが継ぐし、俺が存在する理由が迷子だった」

植松さんが言っていたことを思いだす。幼い三実さんは、鶏舎を逃げ場にして自身の居場所を探しているような子どもだった。

「今は違う。幾子を愛し、愛され、それだけでここにいていいって思える。無理に道を模索しなくてもいい。すごく安心する。幾子のおかげだ」
「私は何もしていませんよ」

答えながら嬉しくて頬が熱くなる。

「そうだ、もう少しで結婚半年記念です。お祝いしましょう」
「ああ、祝おう」
「ご馳走を作ります。好きなもので、リクエストがあったら言ってくださいね」
「好きなものは幾子一択だな」
「もう、そういうんじゃなくて」

寒空の下、大好きな人と笑い合いながら歩くのは幸福だった。

もう少しで半年記念日。まだたった半年と思うけれど、私にとっては大事な大事な記念日だ。