目覚めると鼻の先がつんと冷たかった。寒い。布団から出た裸の肩が冷えていて、私は身震いした。
11月、初冬の朝はきりりと寒い。

朝食を作らなければ。私はもぞもぞと上半身を起こす。隣で眠る夫を起こさないようにしたつもりだけれど、左手首をがしっと掴まれてしまった。

「三実さん、起こしちゃいましたか?」
「おはよう、幾子」

挨拶するなり、私を布団の中に引っ張り込む。裸の胸に抱き寄せられ私は慌てた。

「三実さん!」
「もう少しこうしていよう」
「朝ごはんを作りますので!」

断って布団から脱出しようとするけれど、なおもきつく抱き締められ果たせない。

「幾子は毎日出汁を取って味噌汁を作ってくれる。米に焼鮭、おしんこ。綺麗な朝食を整えてくれる。でも、俺はもう少し手抜きでもいい。その分、幾子とベッドでゆっくりできるなら」

嬉しい言葉に胸も心も温かくなる。いつもいつも三実さんは私を甘やかす言葉をくれる。

「ありがとうございます。でも、今日のところはお米を炊いちゃったので」
「幾子、土曜くらいのんびりしよう」

なかなか離してくれない三実さんとじゃれているうちに、唇を重ねられた。

「ん……」

そのまま深くなる口づけに、あと数時間はベッドから出られなさそうだと思うのだった。