お義父さんのお誕生日会の日がやってきた。金剛家の大事な行事だ。
お義兄さんふたりのご家族は全員集まるそうで、もちろん私と三実さん夫婦も参加。そして、なぜか志信さん親子も参加。

お義父さんは私を試したいらしい。金剛家の嫁として、相応しい差配ができるか。
気張るつもりはないけれど、私は私で譲れないものがある。それを守るだけだ。

「今日はよく集まってくれた」

広間に集まった家族に、お義父さんは上機嫌だ。欲しい物はないというお義父さんにプレゼントは渡さない決まりだ。息子たちがお祝いの言葉を述べ、後は大宴会になる。

といっても、志信さんも気詰まりだろう。信士くんもずっとここでは退屈に違いない。中高生の子たちから無遠慮な視線を投げられるのも、嫌だろう。落ち着いたらふたりを連れ出すのもいいかもしれない。
私は三実さんと並んでお義父さんにお祝いを言い、その後は義兄嫁さんのおふたりと少しお話をした。ふたりとも私より二十歳以上年上なので、話しに混ぜてもらったという感じだったけれど。
三実さんはお義兄さんたちとお義父さんを囲み、お酒を楽しんでいる。

食事も済み、お酒がメインになってくると、未成年の子たちは退屈なのか席を外したり戻ってきたりになる。完全に退室するのはよくないようだ。
私はそっと志信さんたちに近寄り声をかけた。

「信士くんも退屈でしょう。少し外の空気を吸ってきませんか」
「いいわ」

持て余していたのは志信さんも同じようで、箸置きで遊んでいた信士くんを促し立ちあがる。