猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~

志信さんがめちゃくちゃ怒った顔をしている。ざわざわと怒りのオーラが見えるようだ。私はケロッとした顔のまま続ける。

「実は着やせするタイプだから生足の脚線美に自信がないとか。ハタチの私と並びたくないとか。そういうアレですか?」
「あなた、喧嘩売ってるの?」
「喧嘩は売ってません。三人で遊ぼうって言ってます。信士くんの夏休みの思い出作りです。絵日記書くんです!学校で絵日記は貼りだされるそうですよ!」

まくしたてる私をねめつけ、志信さんがしばし黙る。きっと色々考えている。
だけど、信士くんの学校生活を志信さんは優先するはず。

「……ちょっと待ってなさい。着替えてくるわ」

憎々しげに呟き、離れの縁側から去る志信さんを見送り、私と信士くんはそっとガッツポーズをした。


その後、私たちは日暮れまで遊んだ。
最初こそ不貞腐れていた志信さんも、途中から本気で私と信士くんと水遊びに興じてくれた。想像はついていた。もともと勝負事が好きな人なのだ。そしてムキになるタイプだ。

何が嬉しかったって、信士くんがずっとずっと笑っていたことだ。きゃあきゃあ悲鳴をあげ、歓喜の叫びをあげ、大はしゃぎだった。
志信さんに抱きついてふたりでプールに転がったときは、志信さんも信士くんも笑っていた。私も笑った。
ああ、楽しいな。信士くんと志信さんも楽しいと思ってくれたら嬉しい。