猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~

「幾ちゃん、覚悟しろ!」
「なにを~!生意気な~!」

エキサイトしてくるので、ふたりとも叫んでいる。すごく楽しい。弟がいたら、こんな感じなのかしら。

「ちょっと、あなたたち」

冷たい声が聞こえてきて、私と信士くんは動きを止めた。
見れば、縁側には志信さんが立っている。あきれ果てたような冷えた眼差しで私たちを見ている。

「はしゃぎすぎじゃないの?お外まで声が聞こえてるわ」
「すみません。楽しくて」

私は謝ったものの、さほど悪いとは思っていなかった。

「信士、塾の予習復習は?」
「終わったよ」

信士くんはぼそぼそと答える。楽しい遊びを妨害された上、叱られると思っているのだ。

「志信さん、早いですね」
「今日は早上がりだったのよ」
「じゃあ、もう職場にもどらなくていいんですね」

確認してから、私は笑顔になって言った。

「志信さんも水遊びしましょう」
「はあ!?」

志信さんが顔をしかめ、最高に嫌そうな声をあげた。私はめげずに誘う。

「せっかく広いプールを買ったんです。ふたりきりはもったいないので」
「そんなのはあなたの勝手で買ったものでしょう。私は嫌よ。巻き込まないでちょうだい」
「水着は要りませんよ。私もこんな格好だし」
「嫌だって言ってるでしょう!?」

かなり苛立った声で怒鳴りつけられ、私は敢えていぶかしげな顔をして見せた。

「もしかして志信さん」
「なによ」
「脚を出すのが恥ずかしいんですか?」