寝室は畳で、布団が二組敷いてある。
濡れ髪を拭きながらそれを見て、心臓がどくんと鳴った。

お嫁入りしたわけだから、私は三実さんと今夜そういう関係になるのだろう。それはわかっている。
でも、正直に言えば怖い。中学高校は女子校だった。男性と付き合ったことはないし、男性を好きになったことすらない。
これから男の人と性的に触れ合わなければならない。
怖い。

いや、三実さんは大人だ。立派な男性だ。私が不安を伝えれば、なるべく優しく扱ってくれるだろう。
うまくすれば、今日はそういった事象を回避できるかもしれない。あの優しい面差しで、『幾子さんが怖いなら、今日は添い寝だけにしよう』とか『それじゃあ、今日はお互いのことを知るためにお喋りしながら寝よう』なんて温かな言葉をかけてくれるかもしれない。

そんなことを考えているうちに、私は居間のソファで眠り込んでしまっていた。




次に気づいたのは誰かの気配だった。人影が電球の光を遮ったのが寝ていながらわかったのは、眠りが浅くなるタイミングだったのかもしれない。
次の瞬間、私の身体がふわっと持ちあがった。

「え?」

寝ぼけた私は自分の状況が把握できていなかった。ただ私を抱き上げた人を見つめる。

「起きたか」

そこには私の夫がいた。
金剛三実、その人が。