猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~

志信さんはまだ折れていない。どうしても三実さんと復縁したいのだ。
信士くんを彼の息子だと言い張るのは無理があると理解しているだろう。だから、かつての情に訴えて、三実さんを振り向かせようとしている。彼女の強い性質とプライドから上手くいっているとは思えないけれど。

ともかく、口説き落とす予定の三実さんと、身を引くよう諭す私がそろっていなくなっては困るはずだ。

「お母さん、僕を三実おじさんの子どもにしたいのかな。でも、三実おじさんは幾ちゃんと結婚してるんでしょう?」
「うーん、そうね」
「じゃあ、僕は幾ちゃんと三実おじさんの子どもになるの?」

驚いた。そういう発想になるとは。
でも、彼は幼いながらに必死に考えているのだ。志信さんが推し進めている考えが信士くんにはわからない。

……もしもだ。
志信さんが経済的に信士くんを育てられないとして、三実さんが幼馴染への情で、信士くんの育成を手伝いと考えた時、彼が私たち夫妻の養子になる未来もゼロではないんじゃなかろうか。

「あのね、もし、そうなるとしたらどう?その、私の子どもにって……こと」

信士くんは水鉄砲を床に置いた。まだ半分も空気が入っていないビニールプールに触れて、私を見上げる。