「新居の件、ひと言相談してほしかったです」

三実さんがはっと瞳を見開く。驚いた顔になる。

「立地や家具に意見があったか!?すまない!先走ったようだ!」
「いえ、そういうことじゃなくて、志信さんのこととか……。信士くんのこの先とか……。何か考えてらっしゃるんでしょう?そのあたりも丸々教えてくれないんですもの」

私のぼそぼそとした答えに、一転三実さんがふわっと表情を緩めた。

「幾子は本当に可愛い女だ。いい妻だ。志信のような激しい女と渡り合い、俺の隠し子かもしれない子どもを可愛がってくれる」
「隠し子じゃないって知ってますから」
「幾子に内緒事が多くてすまん。もう少しで全部片付くから、今しばらく説明に猶予をくれるか?」
「はい。……信士くんは何も悪くありません。彼に不利益が起こらないようにお願いしますね」

私が口を尖らせて念を押すと、三実さんは明るい笑顔で答えた。

「またあの子ばかり心配して。嫉妬で狂いそうだ!」
「笑顔で嫉妬とか言われても困ります。相手は小学1年生ですよ?」
「関係ない。男である限り、幾子を奪われないよう警戒せねばならない」

どこまでも底抜けに明るくそんなことを言う彼の目は、しっかりギラギラ燃えていた。
私もなんとなく気づいていた。あの晩、私を抱いた三実さんは、信士くんに嫉妬していた部分もあるのだ。