「三実さん?」
「おいで、幾子」

三実さんの後について、そのマンションに入る。セキュリティばっちりのハイソサエティなマンションの最上階にその部屋はあった。
三実さんが鍵を開けた時点でなんとなくわかってしまった。

部屋には真新しい家具。リビングのローテーブルには私の通勤バッグがおかれ、三実さんのスーツのジャケットがダイニングの椅子にかかっている。
おそらく、奥の部屋には私の服が入った桐箪笥があり、クローゼットのどこかには私の服と荷物の段ボールがあるだろう。

「三実さん……ここは」
「俺たちの新居だ!」

三実さんが胸を張って言った。

「幾子、苦労をかけたな。今日からここで俺たちは新婚生活をやり直そう」

私は呆気にとられて三実さんを見つめ返す。

「引越したんですか?」
「幾子が実家に帰っている間にね」

急転直下とはこのことだ。言葉が出ない。
結婚二ヶ月、私と三実さんはとうとう二人暮らしをすることになるらしい。