私は東京に戻らなければならない。なぜなら、私の新しい家族が待っている。今もきっと私を探している。
父に話そう。三実さんのこと。私は不幸で逃げ出してきたんじゃない。考えたくて家を出た、と。
結果、思わぬ贈り物をもらった気分だ。今ならきっと、素直に語れる。私の夫は、すごく私を愛しているんだって、父に教えてあげられる。
私が口を開きかけた時だ。階下から物音が聞こえた。
玄関のドアの音と、諭の声だ。
いつの間に?いや、きっと父と一緒に戻っていたんだ。
「あんたは帰れ!幾子は返さへん」
諭が怒鳴る。まさかと思う間もない。聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
「頼みます、諭さん。幾子に会わせてほしい」
三実さんだ。私を迎えにきたんだ。
階下からは真剣なやりとりが聞こえてくる。
「幾子は何も言いません。でも実家を頼ってくるってことは大事や。あの子を傷つけたんやろ」
「諭さん、幾子と話を。どうか」
「可愛い妹が不幸せになるのをニコニコ見守る兄貴がどこにおるんです?絶対に渡さへん」
三実さんは一歩も引かない様子で食い下がる。
「ほんの少しでいいんです。幾子と話させてください」
「あんた、ほんまにわからん人やなあ」
どこまでも引かない三実さんと声が気色ばむ諭に、背筋がひやっとした。このままでは喧嘩だ。私は勢いよく階段を駆け下りた。父が後から降りてきた。
父に話そう。三実さんのこと。私は不幸で逃げ出してきたんじゃない。考えたくて家を出た、と。
結果、思わぬ贈り物をもらった気分だ。今ならきっと、素直に語れる。私の夫は、すごく私を愛しているんだって、父に教えてあげられる。
私が口を開きかけた時だ。階下から物音が聞こえた。
玄関のドアの音と、諭の声だ。
いつの間に?いや、きっと父と一緒に戻っていたんだ。
「あんたは帰れ!幾子は返さへん」
諭が怒鳴る。まさかと思う間もない。聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
「頼みます、諭さん。幾子に会わせてほしい」
三実さんだ。私を迎えにきたんだ。
階下からは真剣なやりとりが聞こえてくる。
「幾子は何も言いません。でも実家を頼ってくるってことは大事や。あの子を傷つけたんやろ」
「諭さん、幾子と話を。どうか」
「可愛い妹が不幸せになるのをニコニコ見守る兄貴がどこにおるんです?絶対に渡さへん」
三実さんは一歩も引かない様子で食い下がる。
「ほんの少しでいいんです。幾子と話させてください」
「あんた、ほんまにわからん人やなあ」
どこまでも引かない三実さんと声が気色ばむ諭に、背筋がひやっとした。このままでは喧嘩だ。私は勢いよく階段を駆け下りた。父が後から降りてきた。



