うつらうつらとしているうちに玄関が開く音で目覚めた。
日は高いけれど、気づけばもう夕方と言っていい時間帯だ。階段を上る音に身体を起こすと、ドアを無遠慮に開けたのは父だった。
「幾子、おまえまだいたのか」
「里帰りだもの」
私は不愛想に答え、ベッドに座り直した。
「何も連絡せずに里帰りということがあるか。おまえのことだ。飛び出してきたんだろう」
飛び出してきたことは間違いないので、何も言えない。というより、父と何か話す気はなかった。言いつけ通り結婚したのだから、そこから先は関わらないでほしい。父に迷惑をかける気はない。
「何日かしたら戻るから放っておいて」
「金剛家になんと言えばいい」
「何も言わなくていいです」
父が拳を握りしめるのが見えた。わなわなと唇が震える。
「おまえは本当に母親そっくりだな!俺の立場を考えたことがあるのか!」
激高した父が怒鳴った。今までの私なら黙り込み、うつむいて謝っていただろう。
しかし、この時の私は違った。
「お父さんこそ、私の立場を考えたことはあるの!?」
私は大声で怒鳴り返していた。立ち上がり、父をきつく睨みつけて。
父と感情がぶつかり合うようなやりとりをしたことはない。いつも距離を持って冷めた態度をお互いに貫いてきた。
だから、この態度は父を怯ませたようだ。私はなおも続ける。
「お母さんに似てるから私のことが気に食わないくせに。お母さんから引き離しておいて、用がなくなったらお嫁に出したんでしょう?娘をなんだと思ってるのよ!あんたの都合のいい道具じゃない!」
日は高いけれど、気づけばもう夕方と言っていい時間帯だ。階段を上る音に身体を起こすと、ドアを無遠慮に開けたのは父だった。
「幾子、おまえまだいたのか」
「里帰りだもの」
私は不愛想に答え、ベッドに座り直した。
「何も連絡せずに里帰りということがあるか。おまえのことだ。飛び出してきたんだろう」
飛び出してきたことは間違いないので、何も言えない。というより、父と何か話す気はなかった。言いつけ通り結婚したのだから、そこから先は関わらないでほしい。父に迷惑をかける気はない。
「何日かしたら戻るから放っておいて」
「金剛家になんと言えばいい」
「何も言わなくていいです」
父が拳を握りしめるのが見えた。わなわなと唇が震える。
「おまえは本当に母親そっくりだな!俺の立場を考えたことがあるのか!」
激高した父が怒鳴った。今までの私なら黙り込み、うつむいて謝っていただろう。
しかし、この時の私は違った。
「お父さんこそ、私の立場を考えたことはあるの!?」
私は大声で怒鳴り返していた。立ち上がり、父をきつく睨みつけて。
父と感情がぶつかり合うようなやりとりをしたことはない。いつも距離を持って冷めた態度をお互いに貫いてきた。
だから、この態度は父を怯ませたようだ。私はなおも続ける。
「お母さんに似てるから私のことが気に食わないくせに。お母さんから引き離しておいて、用がなくなったらお嫁に出したんでしょう?娘をなんだと思ってるのよ!あんたの都合のいい道具じゃない!」



