初恋すら知らずにこの家に嫁いだ。いきなり現れた理解不能で獣のような本性を持った夫に振り回され、それでも夫婦として距離を縮めようとしてきた。
すれ違い、行き違い、お互いの想いをすり合わせ、……私はうまくやっているつもりだった。

だけど上手くいってなんかいなかった。
……いつの間に、三実さんをこんなに孤独にしていたの?

「俺を……俺を受け入れてくれ……幾子……」

悲痛な哀願に、私の両目から再び涙がこぼれた。
志信さんとこの人の関係にずっと苛立ってきた。私にももっと感情を見せてほしい。私だけを尊重してほしい。
そんな嫉妬の気持ちを持っておいて、なぜ『愛』していないなどと思っていたのだろう。私は、ちゃんと彼を愛している。

三実さんのことを、いつの間にか深く深く愛していた。
この瞬間に気づくなんて。

「みつざねさん」

たどたどしく名前を呼んで、私は両腕で彼の頭を抱き締めた。

「幾子」

彼が私の名を呼び、再び唇を重ねてきた。私は強引なキスを、薄く唇を開けて受け入れた。