「.....名前、教えて下さい.....っ」
ドライヤーの音が途切れた瞬間、
わたしは勢いよく振り返る。
彼はびっくりした表情で、
瞬きをした後、
ふふっと微笑んで
「..... 俺の名前はーーーー
入江 恭也、よろしく
......詩乃ちゃん」
「......え?」
......今、私の名前ーーーーーーー
「はいっ!学校、遅れるよ、行こうか」
「......っ!?!?」
私の目の前でスルスルとネクタイを巻いて
ブレザーを羽織った彼は、
「......同じ.....学校っ......!?」
てっきりこんな完璧な人が自分と
同じくらいの歳だなんて思わないし、
大学生とかだと......っ
「......あっ」
彼はわたしにグッと近寄る。
「......えっ?」
わたしは、まだこの人のことを知らない。
でも、
ドキドキした心臓が止まらなく胸を打つ。
「......リボン曲がってる」
神様、もう1つお願いしてもいいですか?
もう少しだけ、少しだけ
彼を知る時間を下さい。