「血、出てるし」


彼は、わたしの左手を
首元からスっと取ったネクタイで
クルクルと巻いた。




「......なんで......」


わたしはそんな彼を見ようとしても
涙で滲んだ瞳は彼を映さない。



「だって、助けてって言ったでしょ」



......っ!



言った......言ったけど......っ

神様なんて、そんなの、信じてないのに




「だから、俺があんたを助ける。それだけ。」




彼はふっ、と笑って
わたしに自分の着ていたコートを
フワッとかける。


そのコートはこの人の体温で暖かくて
冷めきった身体をふわっと暖める。





こんな夜中に歩く場違いな女の子に
話しかけるなんて怪しいはずなのに、



何故か、この人を疑うことが出来ない。




「俺のところに来なよ」



彼は座り込んだわたしの頭に
ポンっと手を置くと、
そう言って、私の目を見て微笑んだ。



この出逢いが、神様が巡り合わせた運命なのか
単なる偶然なのか、わたしには分からない。


けど、わたしは冷たい手で
暖かい彼の手を握った。