しかも、気の弱そうな生徒ばかり狙っているらしい。俺は一度も当てられたことがない。
さらにたちが悪いことに、気に入っている女子生徒も当てないらしい。
こいつに狙われるのは、害がなさそうな奴。
黒板に、教科書に書いていないだろう数式を書き出した教師。
書き終わり、きょろきょろと教室を見渡すふりをしているけど、こいつの考えなんて見え透いていた。
たぶん、もう当たる奴は決まってる。
「それじゃあ編入生、この問題解いてみろ」
由姫を見ながら、にやりと笑ったそいつ。
途端、教室内は安堵と笑い声に包まれた。
「先生、編入生いじめちゃかわいそうじゃん~」
とくに女子生徒たちが、くすくすと笑っている耳障りな声が聞こえた。
由姫……さっそく女どもに嫌われたのかも。
由姫の隣の席に座る海とかいう男。こいつはたしか有名な奴だ。
双子も顔は悪くないから、ぼちぼち人気なんだろう。
急に入ってきた地味な編入生が、そんな奴らと仲良くしてたら……性根の腐った女たちは面白くないだろうな。

