当の本人は気づいてないみたいだし……由姫が言うつもりがないなら、俺は誰にもバレないように隠す手助けをするつもりだ。
由姫のことを知っているのは、俺だけでいい。
クラスの奴らは完全にガリ勉認定しているらしいけど、由姫の正体がサラなんてバレたら……大騒ぎだ。
あいつにもまだ言ってないって言ってたし……今サラがこの学園にいると知ってるのは、俺だけが。
そう思うと、優越感が湧き上がった。
1限目の数学の教科書を見つめて、「うーん」と唸っている由姫の横顔を見つめる。
「やっぱり進学校だから、授業も進んでるなぁ……」
「そうか……?」
「もう3年生の範囲してるんだね……。置いていかれないように、しっかり予習復習しなきゃ」
由姫にとっては、余裕の問題ばっかだと思うけど。
由姫の母親は、有名大学の元教授。今は国内でも有名な学習塾の学長をしていて、由姫には人一倍厳しく勉強を教えていた。
中学の頃にはもう高校の勉強をしていたし、きっと今は大学の勉強でもしてるんじゃないかと思っている。

