目の前に、由姫がいる……。

 無理やり奪った隣の席で、由姫をじっと見つめる。

 ウィッグとメガネをつけていて顔は全然見えないけど、それでも由姫という存在っていう事実だけで、顔が緩んで仕方なかった。

 変装は正解だよな……。

 別人すぎて、俺も最初は気づかなかったけど……。

 由姫は、一言でいうなら絶世の美少女、だ。


 淡い桃色の髪に、透き通る空色の瞳。日焼けを知らない、陶器のような白い肌。

 どこを探しても欠点ひとつ見つけられないほど、キレイな容姿をしている。

 昔から買い物に出かけるだけでスカウトやら取材やらに捕まっていたし、意図せずとも人目を集めてしまう。

 そのままの姿でこんな男だらけの学園に来ていたら……他の奴らが放っておかないだろう。

 しかも、由姫のことを知っている奴が、この学園には多すぎる。

 “サラ”という名前は、ここらじゃ知らない奴はいないだろう。

 誰かが勝手につけた通り名だけど、由姫は俺以外の奴とはサラという名前で仲良くしていたらしい。

 じつはサラのファンクラブもあるらしく、いまだにサラを探している奴はわんさかいる。