総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜



 じつは、今朝手首をひねって握力検査に不安があった。

 かよと俺はほとんど結果が一緒だから、代わりに測ってもらうことに。

 たまに、こっそり入れ替わることはよくある。

 誰も俺たちが入れ替わったことになんか、気づかないからバレることはない。

 ただの一度もバレたことはないから、自身があった。

 俺は体育館の隅で、かよのフリをして測定が終わるのを待つ。

 すると、離れたところから地味メガネが駆け寄ってきた。

 なぜか、焦った表情をしている地味メガネの姿に眉間にシワを寄せる。

 近づいてきて、なんだよ……。



「……や、弥生くん、何してるのっ……?」



 一瞬、理解するのに時間がかかった。

 こいつが口にしたのは、紛れもなく俺の……俺自身の名前。

 でも今、俺はかよのフリをしている。

 俺たちを唯一見分けるすべであるマスクをつけているのに……どうしてこいつは、俺の名前を呼んだんだ?



「……は? なに言ってんの? 俺は華生だけど。マスクつけてんだろ」



 そう言うと、地味メガネは顔色を変えずに口を開いた。