じつは、今朝手首をひねって握力検査に不安があった。
かよと俺はほとんど結果が一緒だから、代わりに測ってもらうことに。
たまに、こっそり入れ替わることはよくある。
誰も俺たちが入れ替わったことになんか、気づかないからバレることはない。
ただの一度もバレたことはないから、自身があった。
俺は体育館の隅で、かよのフリをして測定が終わるのを待つ。
すると、離れたところから地味メガネが駆け寄ってきた。
なぜか、焦った表情をしている地味メガネの姿に眉間にシワを寄せる。
近づいてきて、なんだよ……。
「……や、弥生くん、何してるのっ……?」
一瞬、理解するのに時間がかかった。
こいつが口にしたのは、紛れもなく俺の……俺自身の名前。
でも今、俺はかよのフリをしている。
俺たちを唯一見分けるすべであるマスクをつけているのに……どうしてこいつは、俺の名前を呼んだんだ?
「……は? なに言ってんの? 俺は華生だけど。マスクつけてんだろ」
そう言うと、地味メガネは顔色を変えずに口を開いた。

