俺のことを見る瞳には、何もない。
媚びも、欲も、畏怖も、何も……。
それが心地いいなんて思ったのは、熱で頭がおかしくなっていたからかもしれない。
俺はぼうっとそんなことを考えながら、いつの間にか眠りについていた。
久しぶりの深い眠りは、驚くほど安らかな時間に感じた。
「ん……」
夢を見た。内容は思い出せないが、とても心地いい夢。
目が覚めた時、自分が寝ていたという事実に気づき驚く。
あれだけ眠れなかったのに、どうして。
熱で辛かったから? 睡眠不足に限界が来たから?
いろんな理由を考えたが、どうにもピンとこない。
俺は少しの間ぼうっとしていたが、手に感じている違和感に気づいた。
視線をそっちに向けると、すやすやと眠っている女が目に入った。
そして、布団ごしに握られた手。

