「我慢してください! 病人は安静に、ですよ!」
怒っているとか、そんなふうではなく……ただ、子供をしかるような言い方だった。
「……っ」
女からそんな扱いを受けるのは……というか、誰かからそんなふうに扱われたのは初めてだった。
俺に群がってくる人間は、俺に取り入りたい奴か、陥れたい奴のどちらか。
こいつは……なんだ……。
ゆっくりと俺をベッドに寝かせた女は、そのあと慌てた様子で部屋から出ていった。
戻ってきたと思ったら、その手にはタオルやら水やらがあり、どうやら看病をする気らしいとぼんやりとする意識の中で理解する。
女に看病されるなんて、今までの俺なら絶対に、何があっても拒んだだろう。
女を殴ってでもやめさせたに違いない。
でも――今はなぜか、抵抗する気がさらさら起きなかった。
こいつは、なんなんだ……。
別に恩着せがましく世話を焼いているようにも見えないし、何か見返りを求めているようにも見えない。

