総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜




 少し威圧すれば逃げるだろうと思い、女を睨みつけた。

 だが、女はいっさい怯まず、表情ひとつ変えない。

 ……なんだ、この女。

 普通、男でも逃げるぞ。

 変わらず心配するような視線を向けてくる女が、不思議で仕方ない。

 しかも、その瞳に嫌味というか、下心は少しも見えない。

 ただ心から心配しているような、そんな視線に見えて、そんなことを思った自分に嫌気がさした。

 バカか俺は。

 女が、見返りを求めずに人を助けることなんかない。

 この女にだって何かあるはずだ。そうに、あるに決まってる……。

 俺に近づいてくる女は、そんな奴しかいなかった。

 強い痛みが走って、頭を押さえた。



「……っ」

「大丈夫ですか?」



 手を伸ばしてきた女の手を、反射的に振り払う。