少し威圧すれば逃げるだろうと思い、女を睨みつけた。
だが、女はいっさい怯まず、表情ひとつ変えない。
……なんだ、この女。
普通、男でも逃げるぞ。
変わらず心配するような視線を向けてくる女が、不思議で仕方ない。
しかも、その瞳に嫌味というか、下心は少しも見えない。
ただ心から心配しているような、そんな視線に見えて、そんなことを思った自分に嫌気がさした。
バカか俺は。
女が、見返りを求めずに人を助けることなんかない。
この女にだって何かあるはずだ。そうに、あるに決まってる……。
俺に近づいてくる女は、そんな奴しかいなかった。
強い痛みが走って、頭を押さえた。
「……っ」
「大丈夫ですか?」
手を伸ばしてきた女の手を、反射的に振り払う。

