「は、はい。ありがとうございます」
私はお礼を口にして、視線を前に戻す。
校舎に入って廊下を進む。ある部屋の前で、舜先輩は足を止めた。
「ついたぞ、由姫。ここが理事長室だ」
立派な造りの扉の前、表札には舜先輩が言うように、理事長室の文字。
「ありがとうございました」
ここで舜先輩とはバイバイかと思ったけれど、どうやら先輩も理事長室に入るようで、私の先を進んでくれる。
三度ドアをノックし、舜先輩はドアノブに手をかけた。
「失礼します。編入生を連れてきました」
中から、返答はない。
しかし、先輩は重たそうな扉をいとも簡単に開け、私に入るよう促した。

