私、白咲由姫は、2年間お父さんのお仕事の都合で九州に住んでいた。

 もともと関東に住んでいたから、仲のいい友達たちと離れるのはすごく寂しかったけど、中学3年生だった私にひとり暮らしという選択はなく、泣く泣くみんなと離れることに。


 そして――今日、やっと住み慣れた地に戻ってきた。



「わ~! 久しぶりの我が家だぁ……!」



 玄関を上がって、家の中を走り回る。



「やっぱり、この家が一番落ちつくね」



 私の言葉に、その場にいた家族全員が笑顔になった。



「そうだなぁ」

「ふふっ、そうね」

「お姉ちゃん、はしゃぎすぎだよ」



 お父さん、お母さん、そして弟の輝。

 ふふっ、当たり前だけど、何も変わってなくて安心したなぁ……。

 でも、私はまたすぐに出ていくことになるんだけど……。



「ねえ由姫、本当に西園寺学園に行くの……?」



 急に寂しそうな表情に変わったお母さんが、恐る恐る聞いてくる。